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歌舞伎座ほか全国の公演情報

、インタビュー、ニュースなど 歌舞伎特集

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  • 当代きっての人気歌舞伎俳優が“家の芸”歌舞伎十八番『鎌髭』の復活上演に挑戦。
    亡き父への思いを込め、新たな作品づくりへの情熱を語った。
  • 江戸歌舞伎の名門・市川宗家の御曹司として生まれ、つねに世間の注目を集めている歌舞伎俳優・十一代目市川海老蔵。古典から新作まで意欲的に取り組み、高い評価を得ている次代の歌舞伎界をリードする存在だ。2月に父・十二代目市川團十郎を亡くし、市川宗家を継承する立場になった。
    そんな海老蔵が5月、京都・南座で歌舞伎十八番(市川宗家の“家の芸”)『鎌髭(かまひげ)』の復活上演に挑戦する。『鎌髭』は平家の勇将・悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)が主人公の作品。江戸時代に活躍した四世團十郎が初演したが、当時の台本や演出などは伝わっておらず、今回海老蔵は一から創作し、初役で挑む。

    『伊達の十役』 仁木弾正
    もうひとつ、海老蔵が十役を演じ分け、約50回近い早替りで好評を博した『伊達の十役』を関西で初めて上演する。本作は、1979年に三代目市川猿之助(現猿翁)が164年ぶりに復活させ話題となったが、元々は七世團十郎が1815年に江戸の河原崎座で初演したもの。当時、夏の盛りで休みを取る立役者が多く、役者の数が揃わなかったため七代目がひとりで何役も演じる作品を作った、という逸話もある。外題の『慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)』にもある通り、役者が紅葉のように顔を赤くし汗だくになって演じる、相当の体力が要求される舞台だ。
    昼は復活ものの『鎌髭』、夜は体力勝負の『伊達の十役』と、まさに海老蔵奮闘公演ともいえる「五月花形歌舞伎」への思いを海老蔵に訊いた。

    まずは昼の部で上演する『鎌髭』についてお聞かせください。

    「平家と源氏の話で源氏方が全盛なわけですよ。で、平家の中には悪七兵衛景清がいるから、あいつだけは倒しておこうという話になり、源氏方が罠を仕掛けたわけです。その罠は、景清に酒を飲ませたりしてどうにかして術中に嵌めていこうという考えなんですよ。それに対して景清はその罠を知っていてそこに乗り込む形にしました。大らかに言うと『髭伸びてきたなぁ~、酒呑みてぇなぁ~。あっ、そういえば向こうにあんな罠があるぜ。あそこに行けば酒も振舞ってもらえるし、楽しい話もできるし、髭も剃ってもらえて好きなことやって帰れるな。じゃあちょっと六部(修験者)の格好で行って罠に嵌ってみるか』という構想をひらめいていたので、それを具体的にやってみました」

    源氏方は鎌で景清の髭を剃るとみせかけて首を切ろうとするけれど、不死身なので切れないというお話でしたね。景清は海老蔵さんが演じられるのですよね。

    「景清は無敵なので、本当は父・十二代目團十郎にやってもらいたかったんです。(大病を何度も乗り越えた)不死身の印象があるんでね。なんかこう復活してくるということでやってもらいたかった。残念ながらその夢はかなわなかったので、自分でやるしかないと。今回の『鎌髭』は“歌舞伎十八番”の中でもっとも面白いんじゃないかな、父の印象を色濃く感じられて。父は本当にユニークで大らかな人だから」

    面白いというとどの辺が?


    市川海老蔵
    「“鎌髭”って字を見ると堅苦しいイメージじゃないですか。もうね、ぜんぜん堅っ苦しくないです。とにかく楽しいですよ。僕はドンとそこにいるだけですが、周りの共演者がまぁ~みんな面白い。笑いが止まらない場面がありますね。前半は六部の姿だからお互い騙しあい、腹の探りあい。で、いざ景清となって現れてからは見事に何もしない。周りがひらすら面白いことをやっているっていう、歌舞伎独特の可笑しみを堪能できますよ。このお芝居の中で一番おいしい役は、片岡市蔵さんが演じる“ウルオイアリエモン”で景清ではございません(笑)」

    そんな変わった名前の人も登場するんですね。

    「“ウルオイ~”はお肌の手入れから何から大変な人なので(笑)」

    想像しただけで楽しそうです。あと、隈取りにも特徴があるとか。

    「完全正義の『暫』とかは朱(紅色)なんですけど、『鎌髭』には青黛(せいたい/青色)が入っているんです。歌舞伎の場合、青が入るとちょっと“悪”が入る。そういう遊び心が景清にはあってもいいのかなと思ってます」

    芝居を一から創作される過程は楽しかったですか?

    「そりゃあそうですよ。楽しむことは一番大事ですから。大変ですけどね」

    復活させたいと思われていたのはずいぶん前から?

    「2、3年前からかな。父團十郎にも相談をしていて、父は好きにやりなさいと言ってくれていたので。勧善懲悪の“歌舞伎十八番”、『外郎売』『助六』『勧進帳』『暫』は全部出来ていますが、“景清”が登場する『景清』『解脱』『関羽』『鎌髭』だけ歌舞伎十八番で復活されていないところに着目していたんです。それで、ずっと前からいつか通し(上演)でやろうを思っていたんですけど、その前に、部分部分を完成していかないと通しにならないのではないかと考えたので」

    『伊達の十役』 乳入政岡

    元々は通し狂言でない作品を通しにする?

    「作っちゃおうかと思って、いつかね。10年後くらいに」

    壮大なお話ですね。『鎌髭』の復活だけでも相当なエネルギーが必要だと思いますが、夜は『伊達の十役』と、こちらも体力勝負の舞台ですね。

    「もうほんと大変。気分でやらない日を作って欲しい」

    えっ?

    「休みにする日を僕の権利に委ねて欲しい」

    そう伺うと、大変さがこちらにも伝わってきますが……。
    今回、関西では初めての上演なので、楽しみにされている方もたくさんいらっしゃるかと思います。

    「そのために来てるんですもん」

    初演(2010年)、再演(2012年)を経て3回目の挑戦ですね。何か変わるところはありますか?

    「形は変えないですよ、これは“三代市川猿之助四十八撰”で澤瀉屋のおじさん(猿翁)の型だから。演技を深めたりそういうのはやってます」

    『伊達の十役』を上演したのは2回とも新橋演舞場(東京)でしたが、南座はいかがですか?

    「劇場の中は小さいけど、外観は趣があっていいですね。それに劇場の外、京都の街がいいじゃないですか、綺麗だし、空気いいし、歴史もあるしね。朝早く起きて、お寺巡ってみたりして、昼下がりから芝居観て、終わったら一杯飲みに行って。恋人同士や仲のいい女同士でくるといいんじゃない。あっ、でもね、男の人がひとりでぷらっと『伊達の十役』観にきたらカッコいいと思うよ。見終わったあと“なんか凄かったな”と感じてもらえると思うし、面白いから。で、先斗町とか祇園の“一見さんお断り”みたいな店に、勇気を出して入って一杯飲んでみるとかね。京都は夜、楽しまないと」

    “一見さんお断り”の店はハードルが高そうですが(笑)

    「気合いでしょ(笑)。そういう風にしてスキルアップしてこうぜって話だから」

    京都ならではの歌舞伎観劇の醍醐味が味わえそうですね。

    「やっぱり京都はいいですよ。あのJR東海のCMはよくできてるよね。(とCMソングを口ずさみながら)“そうだ、京都行こう。”って、あれやりたいなぁ~。“JR東海”ってCMで言いたい(笑)」

    取材・文 金子珠美(編集部)

    • 絹川与右衛門
    • 赤松満祐
    • 土手の道哲
    • 足利頼兼
    • 腰元累
    • 高尾太夫
    • 荒獅子男之助
    • 乳人政岡
    • 仁木弾正
    • 細川勝元
    • 『伊達の十役』とは
      足利家の重臣・仁木弾正は、父の亡霊に出会い大望である足利家打倒を決意する。そこで当主・頼兼を陥れ、家督を相続した幼君・鶴千代を手にかけようと画策。乳母・政岡は幼い君主を守るため我が子が犠牲になってもじっと耐え忍んでいた。その様子を見ていた弾正一味の栄御前は政岡を味方だと思い込み、悪事の証拠である連判状を渡してしまう。だが一匹の鼠がその連判状を奪い去る。妖術で鼠に姿を変えていた弾正は悠々と宙空を飛び去って行く。仙台藩のお家騒動を題材とし、三代目猿之助(現猿翁)が1979年に復活上演。善悪の立ち役と女方を次々と早替りで演じ、宙乗りもある見どころ満載の舞台。

      撮影:篠山紀信

    プロフィール

    市川海老蔵(いちかわ・えびぞう)
    1977年生まれ。十二代目市川團十郎の長男。屋号は成田屋。1983年5月、歌舞伎座「源氏物語」で初お目見得。1985年5月、歌舞伎座「外郎売」で七代目市川新之助を襲名。2004年5月、十一代目市川海老蔵を襲名。主な出演舞台は「鳴神」「源氏物語」「助六由縁江戸桜」「勧進帳」など。また、パリ・オペラ座やロンドン、モナコ等の海外歌舞伎公演も積極的に行っている。歌舞伎以外の舞台、映画、ドラマにも多数出演。舞台「天守物語」「海神別荘」では坂東玉三郎と共演。テレビでは、2003年のNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」で主人公の宮本武蔵役に抜擢された。映画は主演した「出口のない海」「一命」のほか、2013年12月に「利休にたずねよ」の公開が控えている。

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